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【「人生学」講義】第2回広島U-30応援セミナーより⑥

【「人生学」講義】第2回広島U-30応援セミナーより⑥

連載 ―「人生学」講義 第2回 ―
2017年11月22日(水)ひろしまブランドショップTAU3階で開催した第2回広島U-30応援セミナーの講義を連載でお届けいたします。

第2回目の講師は、一般財団法人機械システム振興協会会長・東京広島県人会副会長の児玉幸治氏(1934年生まれ。広島大学附属高等学校卒業、東京大学法学部卒業、通商産業省入省。同省事務次官、日本興業銀行顧問、商工組合中央金庫理事長、その他の役職を歴任)です。

「人生学」講義 第2回 児玉幸治氏 ⑥

 

参加者からの質問1:

女性が働くということについていろいろ考えることがあると思うんですけど、今までお会いした中で素敵な働き方をしている女性とかがもしいらっしゃったらお話を聞きたいと思うのですが、よろしいでしょうか。

 

児玉氏:

自慢するわけじゃないんですけど、通産省というところは昭和30年代の半ばからキャリアの事務官に女性の採用を始めた役所でして、最初に入ったのが昭和37年に坂本春生さんという人が入ってきまして、それから後、だいたい毎年採って、4人まで採ったところで、女性の皆さん方が、「男性の試験官は女性に対して甘すぎるから自分たちにチェックさせろ」という話が出てきまして、やってもらいましたら、けっこう厳しいんですね。私も採用の時に男性とか女性とかの区別はつけない、別に女性に下駄を履かせない、全く同じような基準でも立派な方に来ていただいて採用してたんですけど、どうも我々がそう思っていても、女性の方から見ると、基準より甘くやってるんじゃないかと言われて困ったことがありました。

ただ入ってこられた方を見ますと、坂本さんはその後、西友に行って役員を務めて、今はあちこちの会社の社外役員になって活躍しておられますし、その次に入ってきた川口順子さんは役所を辞めた後、サントリーに行って、それから環境庁長官になって、外務大臣になって。環境庁長官の時ですかね、地球温暖化問題の京都議定書を作ったときの責任者でもあるんですね。その後入ってきた人では、一人は太田房江さん。この人は岡山県の副知事をやった後、大阪府の知事をやって、今は参議院議員になってます。それから新田(現、高橋)はるみさんという人。この人は富山から来た人ですけど、北海道の知事になってます。それからこのあいだ内閣官房に出向して総理秘書官になっていた宗像さん。この人は今は特許庁長官になってますけど、みんなそういう意味で言いますと、人事上の妙な差別はなくずっとやってきています。

それで一般的に他の省庁もどんどんそういう形になってきてますし、ちょっと最初自慢しましたが、本当は昔の労働省は非常に早い段階から女性をどんどん採用していて局長になった人もいますし、政治家にもなった人で森山真弓さんという方、官房長官になりましたが、他にもたくさん立派な方がおられます。個人的に申しますと、昔からそうなんですね。官庁はあんまり差別がなかったんですね。だから、入ってこられる方も割合安心して入ってこられたんじゃないかなと思います。

ただ、今流にいえば、当時官庁に入ってきたというのは、ブラック企業に入ってきたようなものだったと思いますよ。通産省なんかもよくからかわれたんですが、「通常残業省」なんて呼ばれましてね。要するに、土曜も日曜もなく夜遅くまで働くのが当たり前というようなところで、女性も同じような状況で、皆一緒にやっていました。今はそういうわけにはいかないと思いますけれども。

もっとどんどん公務員にも皆さん受験をされ入ってこられたらいいと思います。昔キャリアは20人採用する時に1人入っていればいいということでしたが、最近は20人採用しますと3~4人は女性というのが当たり前になってきていると思います。

参加者からの質問2:

先ほどお話の中で昔の日本は長期的な目標を立てていたのに、今は国も企業も短期的な目標ばかり立てているというお話だったのですけど、なぜ最近は短期的な目標しか立てられなくなってきているのか、ということと、僕たちは長期的な目標を立てる上でどういう点に気をつけたらいいか、ということを教えていただきたいです。

 

児玉氏:

短期的な発想になってきたのは、やっぱりコーポレート・ガバナンスという考え方というのが、だいたいアメリカから入ってきたんですね。アメリカのコーポレート・ガバナンスというのは何かというと、株主が最優先なんですね。その株主のために会社というのはどうやって利益を上げるかということを第一順位に上げてくれということだと思うんです。そうすると株主というのは、私も社外取締役をやっていろいろ見てきましたけれど、株主なんていうのは長期的観点で株主になっている人はあんまりいないんですよ。ちょっと株が上がれば売って他の株に乗り換えるという人たちなんですね。だから、アメリカはそういう短期の決算、損益、収支というものを頭に置いて行動する株主が非常に多かった。それに対応するようにどんどんどんどん制度を変えていったわけですね。それを国際標準と称して、日本にもどんどん入れてきたわけです。

日本は初めはそんなにまでやってなかったのですが、最近はさっき申し上げたように、四半期に決算をやっているんですね。昔はそんなアホな事はない。半年あるいは1年で決算していた。あわせて長期展望をしていた。

それからもう一つ、日本の企業経営で非常に違っていると思いましたのは、企業のステークホルダーというのは株主だけじゃないよ、と。企業も地域社会にいるわけですから、地域の人たちとの関係もあるだろう。それから、もちろん従業員との関係もある。それから、お客様は株主ばかりじゃないですよね。使っていただくお客様というのもある。そういうことで、ステークホルダーというのはたくさんいるんだ、と。そういう人たちのことを全体として考えて経営していくというのが日本の経営のあり方ということだったんです。そういう発想に、四半期に儲かった儲からなかったという発想は、本来はなかった。

それが今のアメリカ型の話になってきて困っているんですけど、アメリカでも反省が起きているんですね。あんなにやたらと四半期にどんどんどんどん損益を気にして、株主のために情報提供をする必要が本当にあるのか、という議論が起きてきています。だから、日本もまだ一部分ではあるけれども、こんなにもやるのはおかしいんじゃないのかという議論は起きてますね。ですから、少しでもそういう方向に変わっていった方がいいと思いますし、ステークホルダーというのは株主だけじゃないんだということについて、企業経営者の皆さんにも、昔はそうだったんですから、思い出してもらわなくちゃいけないと思うことがあるわけです。

長期的な視点というのは、そういう意味でいうと、企業の経営の基本がそういうふうに変わっていけば、皆さんも割にやり易いんじゃないかと思いますけど、上からそうなったからそれで上手くやれるというわけじゃないですから、やっぱり物事は下からもいろんな形で影響力を使いながら自分たちの考えを組織の中で問うていくということも必要であると思います。

だから、こうやればすぐそうなるという妙薬はないんですけど、皆さんがそういう発想になっていただいて、そういう発想の人の数が増えてくれれば、非常に影響力を持つようになると思っているものですから、そういうことをあえて今日は申し上げさせていただいたわけです。だから、どこかで折があれば、皆で議論する時に、もっとタイムスパンを長くとっていろいろ考えようじゃないかということをやってもらうといいと思います。お願いしますね。

<⑦に続く>

 

【「人生学」講義】第2回広島U-30応援セミナーより①

【「人生学」講義】第2回広島U-30応援セミナーより②

【「人生学」講義】第2回広島U-30応援セミナーより③

【「人生学」講義】第2回広島U-30応援セミナーより④

【「人生学」講義】第2回広島U-30応援セミナーより⑤