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東京広島県人会

事務局便り

【「人間万事塞翁が馬」講義】第4回広島U-30応援セミナーより④

連載 一 「人間万事塞翁が馬」講義 第4回 一

2019年11月29日(金)広島大学東京オフィスで開催した第4回広島U-30応援セミナーの講義を連載でお届けいたします。

第4回目の講師は、東京広島県人会副会長の三浦惺氏です。

【略歴】東京大学法学部卒業、電電公社入社後、東日本電信電話株式会社社長、日本電信電話株式会社社長、同社会長を歴任。
現在、日本電信電話株式会社特別顧問、株式会社広島銀行取締役、日本生命相互会社取締役

 

 

 

 

三浦副会長講演(「人間万事塞翁が馬」講義 ④)

それともう一つは、今でも格差社会になってきているけれども、今後格差がさらに広がってくると思います。一昨年ダボス会議で世界の8人の富豪が地球70億人の半分の総資産とほぼイクオールであるということが話題になりましたけれども。よく日本でもトップの給料はアメリカに比べたら低いから上げたらいいと。「もっと上げなさいよ」って、私もよく言われました。日本のトップが低いのは事実だと思うんだけれども、じゃあ、アメリカを見習うべきなのかと言ったら、僕自身はそうは思わない。非正規雇用が増えていることもあって、アメリカでも平均賃金というのはほとんど20年上がっていません。しかし、欧米ではトップの給料というのは、20億、30億もらっている人が結構います。ゴーンさんも日産で10億だとか、ルノーとなども入れるとると幾らになるのか知りませんけれども。アメリカの次がヨーロッパ、日本が一番低いんだけれども、その日本でもかなり格差が付いてきたのは事実だよね。

僕が一番心配しているのは、日本の企業の強みというのは中間層の厚みだったと思うんだけれども、その中間層というのは細くなっている。NTTについても危惧しています。企業によって違うと思うんだけれども、現場力というのが少し弱くなっている。企業の業績が良ければトップが幾らでももらえばいいという新自由主義的な考えは、とてもいただけないなと個人的に思っています。社員の中にも「なんで高額所得に名前が出ないんですか」というように、自分の会社のトップはある程度もらってほしいという意見もあるし、「そうは言っても、自分たちはこんな安いのに」という両方の意見があります。以上述べてきたようにデジタル時代になったら、「雇用」「格差」の2つが大きな問題かなというふうに思っています。

そのためには教育というのは本当に大事だと思います。日本が明治時代になってあれだけ早く西欧列強に追いついたのも教育レベルが高かったからだと思います。江戸時代の教育というのは、世界的に見て非常に進んでいた。識字率も恐らく、統計があるわけじゃないですけれど、世界でもっとも高かったのは日本だと思います。寺子屋が1万数千あったり、藩校がある。あるいは適塾などの専門の塾もいろいろありました。それと、指導者が幕末から明治初めにかけてあれだけ西洋をいろいろ回って勉強したということもあるでしょうけれども。

われわれの電気通信の世界でも電報を最初に取り入れたのが明治2年です。2年にはもう電信の工事が始まっている。鉄道だって5年かな。郵便が4年かな。数年であれだけのものができたというのは、やっぱり教育があったからだと思います。戦後焼け野原からジャパン・アズ・ナンバーワンといわれるまでになったのも、基本的には教育というのが非常に優れていたと思います。だから、ゆとり教育の見直しや、大学をはじめ様々な改革が行われていますが、皆さん方個々人もさっき何か専門的なものを、好きなものを身に付けておいたらいいよといった意味でも、時間をつくって勉強をしておく必要があるだろうというふうに思います。

そして、また企業のほうも再チャレンジというのを認めるようになってきていますし、これからますますそうなりますよ。NTTは昭和63年に、昔で言う本社採用と地方採用を一緒にして、3,000人を採用した。そうすると、こんなはずじゃないと。結構辞めた人も出たんです。そういう中もう一度戻ってきたいという人がいれば採れと言っているんです。中途採用という言葉は何かいい言葉じゃないんだけれども、再チャレンジというのは、企業も必要としているし、特にわれわれデジタル関係の人材は日本では少ないからいくらでも欲しい。うちのグループ会社にデータという会社があるんですけれども、M&Aをして3分の2が外人だし。経営研究所などは、入社からずっといるのは半分もいなくて、外からどんどんそれぞれの分野の人材を集めているんです。そうしないともう営業ができないんですよ。その業界のことを知らなきゃ、いくらいいシステムの知識があっても。

いわゆる年功序列型の終身雇用制度というのはなくなりつつあるし、見直すべきだと思う。ただ、ずっといる人もいてもいい。今だと、まだ転職のハードルが高いよね。昔に比べればだんだんハードルは低くなってきているし、これからは、会社サイドからもそうならざるを得なくなっている。だから、本当に自分が何かやりたいということがあったら、転職、再チャレンジというのもありだと思います。再チャレンジを勧めているんじゃないんですよ。私たちの時代は就社だったから、労務の仕事なんて嫌だと思いつつ、そのまま過ごしてきたけれど、考えたらいいと思います。本当に自分に合っていないと思ったら、再チャレンジできる時代というのは来るから、繰り返しになりますが、とにかく自分がやりたいこと、好きなことを深めていく努力をしておくというのは、必要なことだと思っています。

今、NTTが取り組んでいるのは、IWON構想といいます。これまで電話局と電話局をつなぐのが光ファイバーでした。これからはエレクトロニクスの時代からフォトニクスの時代が来ることを展望してやっているんです。11ページに書いてありますけれども。とにかくデバイスも光でやろうと。ですから、あらゆる装置を光でということで、電子の世界から光子の世界へということをNTTの構想として研究所を中心に出しておりまして。したがって、シリコンバレーにも研究所をつくっています。どんどん新しいものを入れていかなきゃいけないし、日本だけでやる時代ではないんだと。これから時々、このエレクトロニクスからフォトニクスへというのはマスコミにも出ると思いますから頭に置いといてください。

<⑤に続く>

三浦副会長講演(「人間万事塞翁が馬」講義 ①)

三浦副会長講演(「人間万事塞翁が馬」講義 ②)

三浦副会長講演(「人間万事塞翁が馬」講義 ③)